就労移行支援事業所に通っている障がい者の方の中には「通っていて意味があるのだろうか」と感じてしまう人もいることでしょう。特に就労に関して進展がないと、就労移行に通っていていい成果を得られるか悩んでしまいがちです。そこで今回は、就労移行支援事業所に通っても意味がないと感じる理由や、通うメリットを詳しく解説します。
就労移行支援事業所に意味がないと感じてしまう理由
就労移行支援事業所に通い始めたものの、「意味がない」「自分には合わない」「通うのがつらい」と感じてしまう人は少なくありません。第三者の視点から見ると、こうした違和感や不満の背景には、いくつか共通する要因があると考えられます。障害特性・不得意な点の認識不足
まず一つ目の理由として挙げられるのが、自身の障害特性や不得意な点を十分に認識できていないことです。自分の状態を客観的に把握できていないと、将来どのように働きたいのか、どのような配慮や支援が必要なのかが明確になりにくくなります。その結果、事業所で提供されるプログラムや自主学習の内容に対して「自分には不要」「合っていない」と感じやすくなります。また、体力面に不安があるにもかかわらず自宅から遠い事業所を選んでしまったり、人が多い環境が苦手なのに知名度だけで選択してしまったりするケースも見られます。
このような選択は、身体的・心理的な負担を増やし、継続利用を難しくする要因となりやすいです。
事業所の方針・特長のミスマッチ
二つ目の理由は、本人の「働きたい姿」や就労への意向と、事業所の支援方針や特徴が合っていないことです。働き方の希望が整理されていないまま事業所を選ぶと、支援内容とのズレが生じやすくなります。たとえば、専門的なスキル習得を重視している人が、ビジネスマナーや基礎的な訓練を中心とした事業所を選ぶと、目的との違いから不満を感じるでしょう。一方で、配慮を受けながら安定して働く準備をしたい人にとっては、個人作業よりもチームワークを重視した訓練が必要な場合もあります。
このように、事業所の特色と本人の方向性が一致していないことが「通う意味があるのか」という疑問につながります。
支援者との相性や事業所の雰囲気が合わない
三つ目として、支援員とのコミュニケーションや事業所全体の雰囲気が合わないことも挙げられます。就労移行支援事業所には多様な支援員が在籍しており、価値観や関わり方に違いがあります。そのため、相性が合わず、相談しにくいと感じることもあるでしょう。また、他の利用者との交流を通じて、場の雰囲気自体が自分には合わないと感じるケースもあります。こうした人間関係や環境面のミスマッチも「意味がない」と感じる大きな要因の一つだと考えられます。
就労移行支援事業所に通うメリット
就労移行支援は「時間の無駄ではないのか」と感じられることもありますが、通所によって得られる意義やメリットは多く存在します。その価値は、単に就職するための場にとどまらず、長く安定して働くための土台づくりにあります。自己理解・障害理解が深まる
まず大きな利点として、自己理解や障害理解が深まる点が挙げられます。就労移行支援事業所では、自己管理やセルフコントロールに関する訓練を行っている場合もあり、日々の通所を通じて「どのような状況で体調や症状に影響が出やすいのか」「どのような配慮があれば働きやすいのか」といったことを整理できるようになります。自分自身の特性を理解し、言葉で説明できるようになることで、就職活動時や就労後に企業側へ具体的に伝えやすくなり、結果として適切な配慮を受けやすくなるでしょう。
他者と働くイメージを持てる
次に、他者と働くイメージを持ちやすくなる点も重要です。実際の職場では、業務の進捗を報告したり、困った際に相談したりと、人とのコミュニケーションが避けられません。就労移行支援のプログラムには、グループワークなど他の利用者と関わる機会が設けられていることが多く、働く場面を想定した経験を積むことができます。こうした経験を重ねることで「自分も働けそうだ」という具体的なイメージや自信につながると考えられます。
就職活動の実践的サポートを受けられる
さらに、就職活動に向けた実践的なサポートが受けられる点も見逃せません。応募書類の作成では、履歴書や職務経歴書の書き方について助言や添削を受けられるため、自身の強みや特性を整理し、分かりやすく伝える力を養えます。面接に不安がある場合でも、模擬面接などを通じて繰り返し練習することで、受け答えの精度を高めることが可能です。こうした支援は、就職活動全体の不安を軽減する助けになるでしょう。
安定した通所実績が就職のアピールポイントになる
また、安定した通所実績そのものが、就職活動時のアピール材料になる点も重要です。障害者雇用では、安定して勤務できるかどうかを重視する企業が多く、決められた日時に継続して通所できていることは「生活リズムが整っている」「自己管理ができている」という評価につながります。仮に通所が難しいと感じた場合でも「自己管理が課題である」と気づけること自体が、今後の働き方を考えるうえで意味のある経験だと言えるでしょう。
就労定着支援を受けられる
就労移行支援を利用して就職した後も、就労定着支援を受けられる点は大きな安心材料です。就職後は環境の変化により、業務内容や人間関係に悩むことも少なくありません。就労定着支援では、就職後も最長3年半にわたり、事業所や医療機関などと連携しながら専門的な支援を受けることができます。これにより、働き続けるための相談や助言を得られ、長期的な就労の安定につながりやすいです。
採用企業が求める基準とは
企業が障害者雇用においてどのような人材を求めているのかについては「長く安定して働き続けられるか」という点が大きな判断軸になっていることがほとんどです。障害を前向きに受け入れられているか
まず最も重要視されているのが、いわゆる「障害受容」ができているかどうかです。障害受容とは、自身の障害を正しく理解し、否定せず前向きに受け入れている状態を指します。企業側が求めているのは、障害名を把握していることだけではなく、具体的な障害特性や苦手な場面、そしてそれに対する対処方法まで理解していることです。仕事をしていく中では、どうしても不得意な業務やストレスを感じる状況に直面します。
そのような場面で、自分なりの対処法を理解し、実践できる人は、職場でも安定して活躍しやすいと評価されやすいです。反対に、対処方法が分からなかったり、分かっていても実行に移せない場合は、就労準備として支援機関で訓練を受けることが求められます。
自己管理能力があるか
次に重視されているのが、自己管理ができることです。長く働き続けるためには、業務スキルだけでなく、日常生活の管理や健康維持も欠かせません。体調や精神状態の変化に早めに気づき、悪化する前に何らかの対処を取れる人は、企業にとって安心して採用できる存在です。一人で抱え込まず、周囲に相談したり、必要な対策を実践できる姿勢が評価につながります。
実際、就労移行支援事業所を一定期間利用することで生活リズムが整い、自己管理能力が向上したと感じる人も多く、自己管理に不安がある場合は前向きに利用を検討する価値があると言えるでしょう。
コミュニケーションスキルがあるか
さらに、コミュニケーションスキルも欠かせない要素です。企業は完璧な受け答えや高度な会話力を求めているわけではありませんが、受け身になり過ぎず、自ら行動しようとする姿勢を重視しています。分からないことがあった際に質問できる、自分の考えや困りごとを伝えようとする姿勢がある人は、職場で周囲と連携しながら業務を進めることができます。人事担当者は、すべての人が積極的に発言できるわけではないことを理解した上で、「伝えようとする意欲」を評価しているのです。
他者の障害特性を受け入れる姿勢
同じ職場で働く他者の障害特性を受け入れる姿勢も重要です。自分とは異なる考え方や感じ方を尊重し、柔軟に受け止められることは、職場全体の円滑なコミュニケーションにつながります。こうした姿勢は、就職活動だけの経験では身につけにくい側面もあります。そのため、就労移行支援事業所でさまざまな障害を持つ人と共に学び、協力する経験は、実際の職場で大いに役立つことでしょう。
就労移行支援事業所を選ぶ際のポイント
就労移行支援事業所とのミスマッチを防ぐためには、事前の自己理解と情報収集、そして慎重な選択が重要です。自分に合わない事業所を選んでしまうと「通う意味が感じられない」「就職につながらない」といった不満につながりやすいため、利用前の準備と見極めが欠かせません。障害に対する正しい理解
まず大切なのは、自身の障害について正しく理解することです。働く上では、自分の障害特性や症状が出やすい場面、発症時や不調時の対処方法を把握し、実践できる状態であることが求められます。そのためには、医師や家族、周囲の支援者の協力を得ながら、自身の状態と向き合う姿勢が重要です。そのうえで、就労移行支援事業所がどのようなトレーニングや支援を行っているのかを事前に調べましょう。
見学や体験利用を通して、自分の障害特性に合っているかを確認することが、ミスマッチの防止につながります。
職務経歴・経験を振り返る
次に、自分の職務能力やこれまでの経験を振り返ることも欠かせません。自分には何ができて、何が苦手なのかを整理することで、就労に向けて不足しているスキルや経験が見えてきます。その不足部分を補うための職業訓練やスキルアップ講座をプログラムに取り入れている事業所かどうかを確認することが重要です。見学や体験の際に、支援員と相談しながら「長く働くために必要な力を身につけられるか」という視点で判断するとよいでしょう。
就職につながりやすい事業所を選ぶ
また「就職」という明確な目標につながりやすい事業所を選ぶこともポイントです。就労移行支援の利用期間は原則24カ月以内と定められているため、限られた期間の中で計画的に就職を目指す必要があります。そのため、就職につながるプログラムが整っているか、実際に就職実績があるかを確認することが大切です。あわせて、就職後の定着率や平均的な通所期間、企業との連携状況なども判断材料になります。
企業が求める人材像や働く上で必要な配慮について、具体的な情報を持っている事業所は、就職成功の可能性を高めてくれるでしょう。
就職後のサポートが充実している事業所を選ぶ
さらに、就職後の自立や定着まで見据えた支援を行っているかどうかも重要です。多くの事業所では、就職後も長く働き続けるための「就労定着支援」を実施していますが、その内容は事業所によって異なります。就職先の企業と密に連携しながら、継続的なフォローを行ってくれるかどうかを事前に確認しておくと安心です。
安易な理由で事業所を選ばない
一方で、安易な理由で事業所を選ばないことも注意点として挙げられます。自宅から近い、有名である、知人が通っているといった理由だけで選んでしまうと、自分に必要な訓練や支援が受けられない可能性があります。昼食代や交通費の補助といった条件面だけに目を向けるのではなく、自分の目的や課題と事業所の特徴が本当に合っているか、無理なく通い続けられるかを冷静に見極めることが重要です。